硯は墨液を作る為の道具です。硯の表面部分(俗に「丘」「墨堂」と呼ばれる部分)は鋒鋩(ほうぼう)と呼ばれる細かいザラザラ状態となっています。この鋒鋩に固形墨をすりつけて墨液を作ります。最近では墨液商品も多く、実際墨液を買われる方は非常に多いです。ありがたいことではありますが、やはり書道用品店としましては、固形墨で墨を磨る楽しみもお客さまに提供したいと思っております。そういえば、わたしが小学生の時分の書道の授業では前半15分くらいは墨を磨りました。先生から「墨を磨って心を落ち着かせてから書に向かいなさい」と教えられたのを思い出します。固形墨には香料も入っておりますので、実際磨っていると良い匂いもして、なんだか落ち着きます。丁寧に作った墨液で書くとなんだか字も上手いような気さえします。とはいえまだまだ勉強中の身ではありますが・・・。
さて、今回は硯の手入れに関してお話させていただきます。前回のブログで泥砥石に関して説明させていただきましたが、今回はその前段階の手入れに関してです。硯の手入れの基本は「毎回きれいに洗うこと」です。今回は私、不肖小寺が実際に手入れしてみましたので、ご参考になれば幸いであります。
毎日手入れが上手く行き届いていない状態の硯を用意しました。
硯の表面がテカテカとしています。所によっては墨の塊のようなものがこびりついています。これはもう重症ですね。鋒鋩に墨が詰まってしまっているのが見た目から分かります。これでは満足に墨を磨ることもできません。そこで、ぬるま湯に一時間ほど着けておき、洗剤の付いていないスポンジの柔らかい部分で墨堂の部分を手入れしてみました。
随分と表面がきれいになりました。ここでのポイントは、ぬるま湯にしばらく着けておくことです。ぬるま湯に着けておくことにより、鋒鋩の間の細かい墨の粒子が浮いて取れやすくなります。冬の時期はお湯もすぐに冷めてしまいますので注意が必要です。また、熱湯だと急激な温度変化で硯が傷んだり、最悪の場合割れてしまうかもしれません。お風呂のお湯くらいを目安に、つけ置きをしてください。
通常の手入れはこのくらいでもいいかもしれませんが、画像からもわかりますが、この状態では墨液が溜まる「海」と呼ばれる部分の墨がきれいには落ちていません。長く手入れが行き届いていないとこのような状態となります。このような場合は使い古した歯ブラシなどを使います。
硯全体がお湯に浸かった状態でこのように墨を落していきます。この際、注意が必要なのは、決して歯ブラシで「丘」の部分を磨かないことです。硯の表面の鋒鋩は石と言えども繊細で、キズが付いてしまうかも知れません。あくまでも「丘」の部分を手入れする際は繊細さにも留意して優しくおこなって下さい。縁の部分のみ、このように歯ブラシを使って頂いてもいいかと思いますが、メラニンスポンジなどもいいかと思います。中にはかなり頑固にこびりついた墨もあるかと思います。その際は何度も何度もお湯で溶かし出してはこの作業を繰り返してください。必ずきれいになります。間違っても金属製の針などではがそうとしないでください。繊細な鋒鋩が傷んでしまいます。
根気よく手入れをした結果、このようになりました。最初の画像と比べるとかなりきれいになりました。ここまでで通常の硯の手入れはいいかと思います。
今回は、お湯につけておく時間も含めて、約2日間程手入れに時間がかかりました。いつもきちんと使用後に毎回きれいに洗えば、数分で終わる作業だと思います。この状態でもうまく墨が磨れない時は、泥砥石を使ってみてください。
こうして手入れをしているうちに硯に愛着がわいてきます。悠久の年月を経て、人間が使う道具となった石を大切に使っていきたいものです。
皆さんも是非お試しください。
筆者名:小寺
「書は体を表す」・・・ということばは上手、下手をいうのではありません。
字はその人、本人そのものなのです。筆・墨・紙・硯などの用具選びからはじまり、使い方・書くときの速さ・筆圧のかけ方・太い字・細い字・・・・その時の心情、さまざまな要素が絡みあって仕上がります。
その作品は、落ち着きやしなやかさ、時には激しさ、厳しさ、書体にこめられたこころ意気も感じられます。そのとき、そのひとでなければ出ない味わいがあります。
そんなかけがえのない作品を軸や額に仕上げていく事を表装といいます。
まさしく衣装をきせていくことなのです。 作品の持つ雰囲気を引き立たせていく事、これが表具師の使命です。
ここでは額装…額の種類を簡単に説明します。
フリータイプ
作品板にアクリルが密着しているタイプ。張り込むスペースが広く余裕があるので小作品を散らして張り込みもできる。一応、規格寸法がある。
落しタイプ
作品板の前に窓枠の様に「落し枠」が入ったタイプ。作品が一段沈みこみ、奥行きがでる。内枠寸法が決まっているので違うサイズの作品を入れることは出来ない。
浮かしタイプ
作品板が下地のマット板部分から前に飛び出す様に付いているタイプ。浮し板を作り直すことで違うサイズの作品にもあるていど対応できる。立体的な作りなので豪華さがある。
その他アクリル額・パネル額などあります。枠の素材も木製・アルミ製があって、額のタイプや作品寸法との組み合わせ次第でお好みのものが作れます。布地も豊富で、色の組み合わせでツートンのデザインにすることもできます。
是非、お気に入りの一品をお選び下さい。
選ばれた額と作品でどうを表現していくか・・・ひとつひとつの作品に真摯に向き合う気持ちを大切に、表装に取り組んでいきます。
筆者:安江
書道用具を選ぶとき、「初心者だから安いもので・・・」という選びかたをしていませんか? たしかにホームセンターや100円ショップなどで安く揃えることもできます。しかし安いものには安いなりの理由があります。
もちろん高いものがすべていいか?というとそういうわけでもありません。小学生には小学生向け、プロの書家の方には書家の方向け、というのがちゃんとあります。それから漢字と仮名でも違いますし、楷書や行書など用途に合わせてもたくさんの種類があり、選ぶのが大変かもしれませんがちゃんと選ぶことでその後の上達もスムーズになります。とくに初めて筆を手にするお子さんにはしっかりと選んであげて下さい。せっかく始めたのに間違った道具を使っているせいでうまくいかずに「私には才能がない・・・」とあきらめてしまうのはもったいないですからね。
書道をはじめるにあたって必要な道具は何があるでしょうか?
筆・墨・硯・紙は文房四宝とも呼ばれとくに重要ですのでじっくりと選んでいただきたいです。一般的に初めて書道を習う場合楷書から始める方が多いと思いますので筆は硬めのもの、紙はにじみの少ないものが良いでしょう。墨は墨液が手軽ですがやはり固形墨を使っていただきたいです。墨色もきれいに出ますし、墨を磨ることで書に向かう集中力も高まります。硯は一度買ったらあまり買い換える方はいないと思いますので硯選びは慎重に。予算にもよりますが6~7インチの端渓硯がオススメです。
その他には、文鎮や下敷きが必要です。
文鎮は写真の一番手前にあるものが定番ですね。細長くて使いやすくつまみ部分が真ん中にあるので紙の中心をとる目安にもなります。変わった形のものは贈り物などに使う方が多いようです。
下敷きは紙の大きさにあわせていろいろなサイズがあり、バランス良く文字が書けるように罫線のはいった物もあります。
お稽古に行かれる方はカバンや筆巻もいりますね。水差しや筆置き、墨床、墨バサミ、などもあると便利です。
これらにはいろいろなデザインのものがありますのでお気に入りのものを探してください。お気に入りの道具を傍に置くことで書道の時間がより楽しいものになると思います。
文房四宝に関してはきりがありませんのでまた別の機会にひとつずつ詳しく紹介していきたいと思います。
筆者名:荒川
こんにちは~♪(v^_^)v
岐阜も先週まで暑くて、秋はまだかな~っと思っていたんですけれど、今週から夜は、少しずつ冷えてきました季節の変わり目なので、体調には、気を付けたいものですね
それでは、気を取り直して、ブログに参りたいと思います(*^_^*)
先日墨運堂様に講座開いて頂きました。
関連づいて今日は、墨のお話しをしようと思います(^O^)
皆様は、墨の保管はどのようにされていますか?
墨は煤と膠を原料としています。
日々の気候条件に順応して絶えず変化しています。
膠は、湿気の多い日は水分を取り込み、乾燥し晴れた日は放出し、墨は生き続け成長しています。
墨にとって最も嫌う場所があります。
・温度、湿度の急激な変化のある場所。
・直射日光の当たる場所。
・湿気の多い場所。
・冷暖房機の風が直接当たる場所。 などです。
雨の日や暑い日、雪が降る日など四季の影響を少ない所、例えば土蔵の中が理想的ですが、現実的ではありません。
これらの環境は、わたし達の身近な生活空間の中にあります。
墨によって好まれる場所
・押し入れの奥。
・タンスや机の中。
直射日光も当たらず、湿気も少ない場所です。
使用後の墨は、反故紙などで磨り口とその周辺をしっかりと拭き取り、桐箱に入れて保管してください。ビニール袋での保管は、カビなどの原因になりますので、入れないでください。
以上の事に気を付けて、大切に墨を使用としていただくと、墨の長持ちにもなります
大玄堂では、墨の商品も多数取り扱っておりますので、気になる方は是非一度覗いてみてください
自分に合った墨を大玄堂で…(^O^)
筆者:林